モノを売るにも運ぶにも欠かすことができないパッケージ。ギフトボックスから化粧箱、段ボールなど、アイデアの詰まった紙器を扱っているアリマックスさんに、商工会議所との付き合いや、事業のこれからについて伺いました。
紙器の可能性とアイデアを追求
ーーアリマックスさんはどういった事業をされているのでしょうか?
ギフトボックスや化粧箱などのパッケージ用品を製造しています。数百という小ロットからでも、お客さまのご希望をお聞きして、製品を企画からデザイン、製造まで一貫して行っています。段ボールの特性を活かした什器や防災グッズなども製造しています。
ーー防災グッズですか?
はい。たとえば、段ボールを使った非常用のトイレを作っていますが、段ボールは実はとても頑丈で、150キロもの体重にも耐える強度がありますし、組み立て式なので、普段はコンパクトに収納しておくこともできます。
ーー万が一のときに持っていると安心ですね。
そうなんです。みなさん「これがあったらいいですね。」って言ってくださるんです。でも実際に購入してくださるかというと、「あわてることはない。」っておっしゃるんです。万が一に備えるより、今夜の一杯のほうがいいって(笑)。
それで、うちはギフトパッケージが主力商品なので、ギフト用にしたらいいと思いついて、「LifeSave48」という商品を開発しました。これは災害の最初の48時間を生き抜こうというコンセプトですが、こういったものは使うことがないほうがいいものですから、なかなか自分では買う機会がないと思います。でも万が一使うようなことがあれば、贈ってくれた人に感謝しますよね。そういう発想で開発したところ、企業の記念事業で注文をいただいたりと好評をいただいています。社名を入れることもできるので、オリジナルのグッズにもなりますよ。
ーーアリマックスさんのグッズもたくさんありますね。
スマホスタンドやカレンダーなどアリマックスの販促品を毎年10個くらいは作っています。うちは従業員が10人程度の会社で、これからさらに人手不足になってくる時代です。ですから、人ではなくて、モノが営業してくれればいいと思って作っています。物言わぬサイレントセールスマンですが、年は取らないしケガもしない、24時間営業だから人間の営業マンよりいい仕事をしてくれますよ(笑)。
ーー確かに、便利に使えるだけでなくて、紙の質感などが実感できますね。
先日も名古屋の展示会のイベントに出展したのですが、パンフレットと現物をもっていきました。出展の際の什器も、設計してインクジェットで印刷して作る、ということが全部段ボールでできます。紙の会社ですから、実際に触ったり見たりすることで、どんな仕事ができる会社なのかを知ってもらうことが大事ですね。
補助金の申請は年に一度経営を見直す機会
ーー小規模事業者持続化補助金を受けられたとお聞きしました。
新製品を紹介するパンフレットとホームページを新しくしたいと思って申請したところ、無事受けることができました。実は、4回目の申請にしてやっと通ったんです(笑)
ーー4回ですか(笑)
毎年出していたんですが、通りませんでしたね。思いが先行して、補助金を受けることで会社にどういう効果が出て売上が上がっていくのか、など会社の現状について、どういうところを伸ばしていけばいいのか、というところの分析が足りなかったのではないかと思います。
ーー毎年申請するのは大変ではなかったですか?
我々のような小規模事業者は、毎日の仕事に追われて長期計画を考えるようなことに時間を割く余裕はありません。私も経営者でありながら、配達や営業もしたりと、一人何役もこなさなければなりません。
そういうなかで申請書を書くことはとても大変ですが、商工会議所さんからは、事業発展計画を立てるような形で指導を受けていましたから、申請を出すことによって、会社の将来像やこれからの経営方法について考えることにつながりました。毎年一回、自分の足元を見る機会になりましたから、4回の申請もいい勉強をさせてもらったと思いますね。
社会の変化はピンチではなくチャンス
いま、人口減少や人手不足ということがさかんに言われていて、後継者がいないために黒字でも廃業してしまうところもあります。うちの会社で相談を受けた事例では、とある製造業者さんが、注文があって製品を作ったのに箱が入ってこないために出荷ができないというものがありました。今、注文をくれるお客さまも材料の仕入先も、そして我々も、関係がフラットになってきていると感じます。どこかに何かがあれば、みんな仕事ができなくなってしまう。これまでは、安定供給ということが重要でしたが、これからは安心、安全に供給できるということが重要になってきています。
ーー人口減少だけでなく、災害などの不測の事態もありますね。
どれだけ計画を立てても必ず世の中は変わっていきます。そういうときに困った困ったと言うのではなく、発想を転換してチャンスと思うことが大切だと思います。
ーー困難や課題のなかにこそチャンスがあるということですね。
チャンスをつかむためにも、商工会議所さんには私たちが個人ではできないことをつないでほしいと思っています。たとえば、長野の南信州と愛知の東三河、静岡の遠州地域を結ぶ三遠南信道ができれば、そこには上伊那地域も含まれます。文化圏として近いこの地域でもっと交流が出来れば、新しいビジネスが生まれるかもしれません。商工会議所さんには、個人では動くことが難しいような外との交流や広域的な情報を会員に伝えてほしいと思っています。
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アリマックス株式会社
ギフトボックスなどのパッケージや段ボール製防災用品などの企画からデザイン、製造までを一貫して行っています。
担当支援員よりひとこと
事業計画を立てることは、目の前の業務に忙殺され、時間のない小規模事業者にとって、1年後、3年後の将来像を描くためにとても大切な作業です。伊澤社長は後継者である息子さんと一緒に、毎年事業計画を立てており、後継者不在による仕入元・取引先の廃業に備えるなど時流を感じながら経営をされています。受注産業であるパッケージ業ではありますが、繊細なレースのようなパッケージを新たな技術として得意先に提案し、引き合いがあると聞いています。