平成5年のオープンから、伊那市で愛されてきた伊藤夫妻の「理美容室F&M」がリニューアル。「お客様と一緒に年を重ねていきたい」―そんな想いでサロンに立つ奥様の美由紀さんにお話を伺いました。
25年間夫婦で走り続けてきた
ーーサロンの成り立ちを教えてください。
創業は昭和60年です。伊那市中央区のテナントで「理容室F&M」をはじめました。当時私は、主人のお手伝い。2〜3年手伝っているうちに美容の免許を取ろうかなと思うようになり、取りました。そのうちに主人から「免許も取れたし、持ち家で理容と美容でやってみないか」と言われました。たまたま近くに空き地があったので、そこを購入し、平成5年に「理美容室F&M」をオープンしました。ちなみに、Fは主人の冨士男から、Mは私の美由紀からとっています。
ーーどのようなお店づくりを目指してきたのでしょう?
理容室と美容室があるので、ご家族やご友人同士で通えるサロンです。想いの通り、お父さんが理容室にいて、娘さんが美容室にいるという風に、ご家族でも一緒に使っていただいています。今では、二世代から三世代に渡り、ご家族で通っていただく方もいます。「あそこいいね」ってお客様に思ってもらいたい。そこだけですね。
ーーご夫婦でがんばって来られたのですね。
そうですね。あと、ここを建てたもう一つの理由は、子供がいたので、店舗併用住宅がいいなと、土日祝のお休みの日も仕事なので、子どもが家にいる時に私たちがお店にいれたらいいなと思いました。
ーー大変だったことはありますか?
私は、そんなに長く修業をしたわけではないので、やりながら勉強でした。流行や技術を学ぶために勉強会に参加したり、仕事のあとに独学で学んだり。子どもがいて、もちろん家のこともしないといけないですし。ハードな日々もありましたが、とにかくお客様から信用していただきたいと思っていました。
商工会議所は大切な相談相手
ーー今回のリニューアルにあたり、商工会議所に相談に行かれたのですか?
そうですね。担当の牧田さんに相談したら、国の小規模事業者持続化補助金の制度があると教えてもらいました。まずは、セミナーに行き説明を聞いたのですが、なんだか大変だなと思いました。そのあと、中小企業診断士の先生との個別面談を予約しました。最初に提出した書類に対して、「こんなんじゃ審査は通らない」とか「このお店は今後続けないのか」と聞かれ、「継ぐ人がいなければやめることになりますかね」というと「そんな想いでやっているのか」と言われたり(苦笑)「お店を潰すことは、後継者がいないというのも大きな問題。それを考えなかったあなたの責任になるんだよ」って。今まで、私にそういうことを言ってくれた人がいなかったので、「私、今まで何をしてきたんだろう…」とすごく悲しくなって、涙がとまらなくなっちゃって(笑)
ーーそれからどうされたのですか?
また、牧田さんに相談しました。仕事の合間に、商工会議所に足繁く通って、アドバイスをいただきながら書類作成を続けました。競争店を調べたり、お客様に高齢者が増えているという現状をデータとともに追加したり。あとは、これからどうしていきたいかっていう熱意の部分を掘り下げました。慣れないパソコンでの書類作成は大変でしたが、お店を見直す機会になりましたね。これから訴えかけていきたい想いも明確になってよかったなと思いました。叱られて悲しかったけど、目を覚ましてもらった気分です。
ーー商工会議所はどのような存在ですか?
牧田さんたちの仕事をみていて思ったのが、地域の企業が元気よく動いていてくれないと、そのまちがだんだん死んでいっちゃう。そういうことを考えてくれる人がいないと困るなと。だから私たち事業者は、目的や目標を考えていないとだめだなと気づかされました。
これからも良きアドバイザーとして、伴走していただければいいなと思います。
後継者をつなぎ、これからも愛されるサロンへ
ーー今回の制度等を使って、どのように改装されたのでしょう?
高齢者の方にも優しいサロンを目指し、店頭入口をバリアフリーにしました。階段の両脇には手すりを付け、階段を緩やかにして、登りやすくしました。美容室の方は、床を木張りにして、足元には壁暖房を取りつけました。あとは鏡を3面から2面にし、スペースをゆったりとって、居心地の良さを重視。壁を漆喰にし、照明もLEDにかえたので店内が明るくなりましたね。あとは、主人のこだわりで、外壁を真っ白に塗り替えました。
それから、改装したことを周知するために、月刊紙に広告を出し、既存のお客様等に向けても特典付きのDMをお送りしました。
ーーサービス面の変更はありますか?
流行りや希望が多様化しているので、できるだけ期待に添えるようにしたいと考えています。また、ヘッドスパを取り入れ、リラクゼーションメニューを増やしていきたいと思っています。
ーーこれから、どうなっていきたいですか?
ずっと通い続けてくれているお客様と、一緒に年を取っていきたいという想いはありますね。それから、生活に必要とされる場所になりたいです。スーパーとかと同じ括りで、「2ヶ月経ったから髪を切ってもらって、気分よく暮らしたいし、あそこに行こう」って思ってもらえるようなサロンにしたいと思います。後継者についても、数年のうちに娘が帰ってきてくれる芽もでてきました。サロンを続けていけるように、がんばりたいですね。
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理美容室F&M
JR「伊那北駅」から徒歩500m、バス停「伊那公民館入口」から徒歩50m。理容室と美容室に空間がわかれているサロンです。
住所:〒396-0015 長野県伊那市中央5168-14
TEL:0265-73-6565
FAX:0265-73-3663
E-Mail:fandmdesu@outlook.jp
営業時間 : 9:00〜19:00(パーマ・カラー受付18:00まで)
定休日:月曜、第1火曜、第3日曜休
担当支援員よりひとこと
小規模事業者持続化補助金の書類作成を通じて「事業所の現状を把握する」「将来を見据えた事業計画を立てる」という慣れない事で非常に苦労されたと思いますが、中小企業診断士の厳しい言葉でも諦めず頑張った事が補助金採択に繋がり、素敵な「高齢者や足腰が弱い方も通える優しいサロン」が完成しました。
今後も事業計画に基づき頑張る理美容室F&Mを支援したいと思います。