商工会議所の伴走型小規模事業者支援推進事業として行われた「いなまちゼミナール」。2020年1月6日から2月6日まで、市内のさまざまな店舗や事業所を会場として約20の講座が開催されました。昨年に続いて第2回目を迎えた「まちゼミ」について、参加しての思いやまちに対する考えを平賀さんにお伺いしました。
まちにある知恵と技を伝える機会に
ーー「いなまちゼミナール」はどういったイベントですか?
市内のさまざまなお店の方が講師となって、地域の方たちが知恵と技を学ぶ機会です。市内にはたくさんのお店があって、そこで働く人たちはみな専門性を活かして働いている人たちですよね。でも店主とお客さんという関係以外では、なかなか接点を持つことがないし、ましてや、どんなお店があるのかを知らない人も多い。身近にいる、確かな知恵と技を持つ人たちから学んで、さらに、まちと人、人と人とのつながりも作っていくことが目的です。
ーーワイルドツリーさんでは、どういったことを?
ワイルドツリーは、ミツロウキャンドルやオーガニック商品を扱うお店です。ミツロウとは、ミツバチが巣作りのためにハチミツから作るロウで、リップクリームからワックスやクレヨンなど、多くの場面で使うことができる天然の素材です。今回のまちゼミでは、布にミツロウを塗ってつくる「ミツロウラップ」の制作ワークショップをしました。ミツロウを使うことで耐久性と耐水性ができて、ラップとして何度でも繰り返し使うことができるものです。
まちゼミでは、ほかにも、「きれい・健康」、「調理・食べる」、「学ぶ」、「ものづくり・体験」、という4つのカテゴリーでスイーツづくりや寄せ植え、焙じ茶、そろばん体験などさまざまな講座がありましたよ。
ーーまちにはいろんな方がいるのですね
私が店舗を構えている通り町商店街は、街のことを知らない人たちにはシャッター街と言われてしまうこともあります。でも、実はさまざまな知恵や技を持っている人がたくさんいます。困ったときに相談するとすぐに解決できてしまうくらい、知恵と技にあふれているのがこの商店街の魅力。まちゼミが、それを伝える機会になっているとうれしいですね。
商店街だからこそできる、これからの暮らしづくり
ーーワイルドツリーさんが伝えたい知恵や技とはどんなことですか?
今、マイクロプラスチックが世界的な問題になっています。そこには、私たちが日々消費するプラスチック製品が深くかかわっています。繰り返し何度でも使えるミツロウラップを作るだけでなく、それを通してエシカルな暮らし、持続可能な暮らしについて考えてもらうことを一つの目的としていました。
でも、それはエコロジカルな生活を勧めることでも、プラスチック製品を使うのをやめようということでもありません。何が正しいとか、こうすることが正解だっていうことはないですよね。それぞれの立場や立ち位置で見える世界も違うだろうし、できることも違う。でもマイクロプラスチックの問題ひとつとっても、それが世界的な問題だからと言って、じゃあ脱プラスチック商品を買えばいいということではないと思っています。
自分たちの生活が世界の環境につながっていること、そして、小さな自分たちの生活をどう変えていくことが世界を変えることにつながるのかを、自分たちなりに考えてもらいたいというのが本当に伝えたいことです。
ーー現代的な生活の中では知恵や技、というものが見えにくくなっていますね
生活をするうえで、自分で考えたり作り出したりする機会は少なくなっているのではないでしょうか。そういう意味で、これからは商店街だからこそ伝えられる価値があるのではと思っています。
ーー商店街の価値、ですか?
今までの商店街は、物の売買をする場でした。でも、買い物はスーパーや郊外の大型店に、さらに、ネットを使えばどこかに赴かなくても可能な時代になりました。当然、商店街がそこと同じ価値観で物事を提供しようとしても、品ぞろえも手軽さも叶うわけはない。だからこそ、これからの時代にとって必要な商店街の機能とは何かを見直す必要がある時期なんだと思います。
それが、今回のまちゼミで行ったように、商店街には専門的な知恵と技を持った人たちがたくさんいるということ、商店街ではわからないことを聞いたり、困ったことを気軽に相談したりできるということ、つまり、コミュニケーションから学びを得ることができる場が商店街である、ということを改めて価値として共有していくことが重要なのではないでしょうか。
ーーコミュニケーションという実感を通して学ぶということですね
本当は、私たちの暮らしも、ミツバチの世界のように、経済の尺度では考えられないものに囲まれているはずです。身近にある知恵や技を通して、自分たちだけのことを考えるのではなく、多様な視点で考えられるようになるといい。そういう持続可能な暮らしを考えるきっかけの場に商店街がなっていくといいと感じています。
商工会議所だからこそできる情報発信に期待
ーー商工会議所に求めることはありますか?
普段自分のお店にいるだけでは出会えない人との接点を作ってほしいですね。今回のまちゼミでは、高校生や大学生に来てほしかったのですが、そこまで情報を届けることができなかったように感じます。商工会議所には、情報を伝える力があると思うので、SNSなどさまざまなツールを使って情報発信をしてもらうえるとうれしいですね。
まちゼミのようなイベントを継続的に開催してもらうことで、まちの魅力を一緒に作って、そして伝えていってほしいです
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いなまちゼミナール パート2
開催期間:令和2年1月6日(月)~2月6日(木)
主催:伊那商工会議所 伴走型小規模事業者支援推進事業
事務局・お問い合わせ 伊那商工会議所:0265-72-7000
担当支援員よりひとこと
今回、ワイルドツリーの平賀さんには、本事業の趣旨に賛同し、SDGsの概念から「脱プラ ミツロウラップ作り」という自店の商材を扱った講座を開催していただきました。
このまちゼミをきっかけに多くの方が、今まで行ったことのないお店のゼミに参加し、そのお店の特徴や商品を知っていただきました。
今後も、多くの店舗がこのまちゼミに参加していただき、自店の技や特徴を講じてもらい、お店のファンづくりをしていただけるようご支援してまいりたいと思います。