自分の好きなことと子育てを両立できる仕事
ーーなぜパン屋さんを始めたのでしょうか？
子どものころからパン屋さんになりたいと思っていました。祖母がなんでも手作りをしてくれる人で、それを身近で見ていたせいか、自分でも作ることが好きだったんです。小学校6年生くらいの頃にはじめてパンを焼いたときにうまくいかなくて、そこからパン作りにハマった感じですね。
ーーそのころから自分のお店を持ちたいと考えていたんですか？
高校卒業後、東京の製菓の専門学校に進学して、そのあとしばらくパン屋さんで働いていました。地元に戻ってきて結婚してからは、しばらくパンから離れていたのですが、出産して下の子が保育園に入るタイミングで仕事をどうしようかと考えたときに、やっぱり好きなパン屋さんをやりたいと思って。外に働きに行くというのでも良かったんですが、夫もやったらどう？と言ってくれて。
ーーここは、いわゆる商業地ではないですが、不安はありませんでしたか？
パン屋を開業すると決めてからは、「やる」ということしか考えていなくて、ここが住宅地だとか、人がわざわざ来てくれるのかとか、そういうことを考えておかなければいけないと気が付いたのは、実際に始めてからでした（笑）。
開業した初めのころは近所にチラシを配ったり、地元のフリーペーパーに広告を出したりしていましたが、店舗での販売と、出張販売や配達などの外で売る分で、バランスよく営業ができていると思います。
ーー逆に、自宅で開業したことでよかったことはありますか？
まだ子どもが小学生と年長なので、子育てしながらやりたいことをできることがすごくいいと思っています。毎朝4時に起きて仕込みをするのですが、起きてすぐに仕事を始められるのもいいですね。朝ご飯は夫に任せていますが、子どもたちが出かける時には見送ることができるのも安心です。もともと家が好きだというのもあると思いますが、いいことしかないです（笑）。
商工会議所には大助かりです
ーー商工会議所に相談に行ったきっかけはなんでしょうか？
経営のことについては何も知らないで始めたので、実際に営業を始めてみるとわからないことだらけでした。決算書を作成しなければいけないけど、どうすればいいのか困っている時に、友人の美容師さんが紹介をしてくれて、初めて相談に行きました。
ーー初めて行ってみて印象はいかがでしたか？
本当に何も知らない状態で行ったのですが、一から丁寧に教えてくれて、そこから何日も通いました。今でもわからないことがあるとすぐに電話して聞いています。すべてが大助かりですね（笑）。
小麦や具に使う乳製品など、パン作りに欠かせない材料が年々値上がりをしている状態なので、決算書も見てもらうなかで、利益率をどうやって上げていくかなど具体的なことも相談にのってもらっています。これから消費税が上がるので、そのあたりもどうすればいいのか相談したいと思っています。
ーー気軽に相談ができるというのは頼もしいですね
パン屋さんを始めたい、という一心で開業したのですが、実際にはパンを作ることだけやればいいわけではなかったです（笑）。経営やお金まわりのことについて相談できる場所があって安心です。
パンを作る日常が幸せ
ーーパンの種類がとても多いですよね？
もちろん自分が作りたいパンというのもあるんですが、ひとそれぞれ好きなものって違いますよね？ たくさんの種類があるとうれしいと思って、いろんなパンを作りたくなってしまいます。だから、お客さんが「おいしそう」と言いながらお店に入ってきてくれる時はうれしい瞬間です。小学生や小さな子どもがみんな私のことを覚えていてくれたり、近所の人たちともパンを通じてつながれるようになったこともうれしいです。
ーーすごく楽しそうですね（笑）
本当にパンを作ることが好きなんです。子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、毎日食べられるシンプルで安全なパンを作っていきたいです。朝も早いですが、全然苦じゃなくて、静かな時間にパンを作っていることが幸せです。
もっと地元のものを使いたいとか、具も手作りを増やしたいとかやりたいことは多いのですが、一人で作っているのでできることには限界があります。今は、大きい目標をつくるよりも、日々目の前のことを一生懸命こなしていきたいと思っています。
今後、人を増やすことができれば可能性も広がるので、そういったことも頭の隅には入れておきたいですね。その時には、また商工会議所に相談に行きます（笑）。
