伊那市出身の井口 裕太さん。若い世代にもお茶の良さを伝えていきたいと、イベント出店、写真映えするラテ、粉末抹茶やお一人様向けティーパック商品の開発、さらには自社お茶ブランドの開発まで、日々精力的に活動されています。


人生を変えた一杯のお茶


ーーお茶屋さんを始めようと思ったきっかけを教えてください。

元は地元の企業で働いていました。その時、疲れていて、一杯のお茶に救われたというか。仕事の日に、たまたま母がタンブラーに入れて持たせてくれたお茶を飲んで、ほっとひと息つけて。「今日も一日頑張ろう」と前向きになれたんです。お茶の力を自分で体感しました。


ーーそれから、どうされたんですか?

それをきっかけに、さまざまな産地のお茶を飲むようになりました。その次は、お茶を栽培してみようと思い立ち、静岡の煎茶会社で働き始めました。土作りから茶葉の収穫まで、全工程を担当していました。静岡県が日本一のお茶どころであることも理由ですが、その会社を選んだのは、全国の品評会でも上位に入る実力もあり、品質と姿勢に共感したから。小規模でファミリー感や団結力があったのも心地よかったです。


ーー地元に戻ろうと思われたのはなぜでしょう?

6年ぐらい働いていました。栽培だけではなく、営業や直売所での販売担当もしていました。その中で、「もっとエンドユーザーとゆうか、直接お客様に触れてみたい」と思うようになった。お茶の生産者って、お茶が最も注目される新茶の時期は忙しくて畑にいるんですね。生産現場にいるのは当然なのですが、せっかくなら注目される時期にお茶を発信したいと思うようになりました。ちょうど子供が産まれたタイミングでもありました。地元で、自分の言葉で、伝えたいお茶を広げていきたいと思いました。今でも、お世話になった会社とはつながっていて、取引先になっています。こんな小口で取引しているところはないと思うので、とても感謝しています。

唯一無二のお茶屋が伊那に生まれるまで

ーー現在のお店を構えるまでには、どのようなストーリーがありましたか?

2017年2月に伊那に戻ってきました。ゲストハウス赤石商店さんのHPをみたら、チャレンジショップのランチ枠の募集をしていたので、会いにいきました。オーナー夫妻が同じ歳で、僕の想いに共感してくれて、週2回カフェを始めました。他の日は、地元のスーパーなどを回ってお茶の行商をしていました。それから、現在の場所に2018年9月に移転オープンしました。

ーー忙しい日々だったのですね。

 

がむしゃらな毎日でした。お茶文化を広げようと公民館や他の場所でもお茶教室の開催も行なっていました。お茶を日常的に飲んでいた世代も年を重ねていく。若い世代の家には、急須もない、急須からお茶を飲むのはおばあちゃん家に行った時だけ。そんな声を聞くにつれ、ますます自分で新しいお茶文化を発信していきたいと思っていました。

 

ーーいちえの強み、特徴はなんだと思いますか?

お茶の知識ならどこにも負けないっていう気概でやっています。難易度が高い「日本茶ソムリエ」の資格も取得しました。生産と販売経験、資格の保有まで一通り持っているのが自分の強みです。お店に置いているお茶は、どんな生産者が、どこの畑で栽培して、この時期に摘み取ったものって、全部把握しています。それをこういう淹れ方をしたら、この味になるって、お客様に説明します。あとは好みで、お客様に判断していただきます。うちのお茶は全部試飲できます。納得して買っていただきたいので。

 

なくてはならない商工会議所の存在

ーー商工会議所とはどのように接点を持たれたのでしょう?

それも赤石商店さんのご夫婦に紹介していただきました。「商工会議所に行けば、創業相談とかあるよ」って。当時から自分の店舗を持ちたい構想は持っていたので、それを伝えるとまずは事業計画書を作るところからだと教えていただきました。他にも、経営相談会とかに参加して、資金調達を学んだりしました。開業を考えているタイミングまで、スケジュール的にはタイトだったのですが、初めから担当の大瀬木さんにお話を聞いていただいていたので、相談はスムーズでした。始めの頃は頻繁に通っていました。アポなしでいって、大瀬木さんがいらっしゃらないこともありましたし(笑)


ーー敷居高く感じてしまいがちですが?

僕は、かなり利用している方だと思います。今でも時間ができると顔を出したり、来てもらったりしています。そうすると、「今度相談会あるよ。こんな補助金あるよ」って教えてもらえます。今となれば、商工会議所を知らずに創業しようとしている人は、不思議でならないくらいです。
多分、自分一人でやっていたら迷走していたと思います。


ーー具体的な制度も利用されているのですか?

消費税10%に変わる時に「軽減税率対策補助金」という、レジスター購入の補助金制度を利用しました。他にも、経理事務をクラウド会計で効率化できるよう指導いただき、活用しています。通常の経営相談にプラスして、より利益がでるお店作り、計画作りを提案してくださいます。僕は、アイデアはたくさんあるのですが、法律のことなどは詳しくない。そういったことを、色々なパターンを見ている大瀬木さんが的確に判断してくださり、時には専門家によるアドバイスもしてくれます。


ーー心強いですね。今後の展望を教えてください。

自社商品の「高遠ほうじ」をもっと広げていきたい。ほうじ茶って需要が減っているのかと思っていたのですが、イベントを通して実は需要が高いことがわかった。市内の焙煎機を使用し、荒茶原料から昔ながらの焙煎でつくってます。地元発信のお茶をもっと皆さんに知ってもらいたいと思っています。

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お茶屋 いちえ
全国各地のお茶や自社ブランド「高遠ほうじ」など、幅広いお茶を取り扱っています。

住所:〒396-0022 伊那市御園1405-01

TEL:080-1469-9965
HP:www.ichie-cha.com
営業時間 : 10:00~17:00
定休日:月曜日(臨時休業あり)・第1・第3日曜日

担当支援員よりひとこと
「お茶文化を地元に広げたい!」。いちえさんの思いは創業時から熱く伝わって来ました。若者のお茶離れ、どうしたらお茶の良さを伝えられるか。計画書作成支援を通じ、抹茶ラテ等の新商品開発、お茶の専門知識を絶えず研鑽、実行される姿は、着実に前進しています。今後も一緒に頑張りましょう!