上伊那の地ではほかに類をみない、こだわりの婦人服を取りそろえるヤマロクさん。商工会議所の補助金を利用して、お洋服の専門店でありながら新しい挑戦をはじめたという米山さんにお話をお聞きしました。


やりたいと思っていたベストタイミングで補助金を知って


ーー小規模持続化補助金を利用して新しい商品を扱うようになったとお聞きしました

当社は創業1901年で、当時はくしやかんざしなどの服飾雑貨を扱っていました。1970年ごろからこだわりのある婦人服を専門に扱うようになり、2001年から今の場所で新店舗を構えていいます。創業からずっと女性に向けたファッションを展開していますが、今回補助金を採択されて、ハンドクリームやリップクリーム、バスソルトなどの美容商品を扱い始めました。


ーーなぜ美容商品を扱うことにしたのでしょうか。

ここ数年、来客が少なくなっているように感じていました。当店は高額な商品も多いので、どうしても客単価が高くなってしまいます。もっと多くの人に足を運んでもらったり、プレゼントなどを探したりと気軽に利用してもらうにはどうしようかと考えていました。東京などでいろいろなお店を見ていると、洋服だけでなく、雑貨や美容商品を置いているところがあって、自分のところでもやってみたいと考えていたタイミングに、ちょうど商工会議所の会報で、小規模事業者持続化補助金のことを知ったんです。それで、ぴったりだと思って。すぐに商工会議所に電話をしました。


ーーそれまでも普段から商工会議所とは付き合いがあったのですか?

いえ、全く(笑)。今回申請をして、「経営相談サービス」の冊子を読んだりして、初めてみなさんこんなに相談しているんだと知ったくらいです。

申請することで自信を持つことができた

ーー実際申請してみてどうでしたか?

問い合わせてから締め切りまでが本当に時間がなくて。こういった申請をするのも始めての経験の中、大変なことも多く、申請までの記憶がほとんどないくらい(笑)。でもわからないことがあれば、すぐに質問ができたり、相談をすることで自分の考えも固めていくことができました。

中小企業診断士のかたに相談する機会があったのですが、そこで「忙しい女性のためのワンストップサービス」というキャッチフレーズをいただいたことで、コンセプトに沿って考えをまとめることもできたと思います。

ーー女性のためのワンストップサービス?

はい。今の女性は働いたり、家のことをしたりと日々忙しいですよね。そういった方が、自分の好きな時間にお買い物ができたり、自分を癒すために時間を使ったりできるような環境を作りたいという思いです。今回の補助金では、美容商品の新規導入だけでなく、ネット販売の強化のために、撮影機材も新しくしたのですが、それもHPから洋服のことをしっかり知ってもらうために必要なことだと思ったからです。

 

ーー時代的な変化も大きいのでしょうか?

そうなんです。低価格のお洋服のお店が増えたり、ネットショッピングや個人間の売買など買い方も変化しています。また、お客さま自身もコレクションの情報を持っていて、発売日に合わせてお買い物をしようとする。そうすると、いかに早く情報を載せることができるか、いかにきれいに商品を見せるのかが重要になりますね。

また、今回の補助金を申請するにあたって、新しく導入したブランドの購入層を分析すると、30代が重要なゾーンだとわかりました。いままでは感覚でやっていた部分が大きかったのですが、データでみることで数字的な裏付けができて、やっぱりそうだったと確信を持つことができました。そこで、その層に響くものを取り入れたりして。時代の変化や流れに合わせていくことも大切だと思います。

ーー申請が経営を振り返るきっかけになったんですね

経営だけでなく、自社の歴史や強みなど、さまざまな観点で振り返ることが出来ました。特に自社の強みについて考えることができたのがよかったと思っています。

ーーどういったところが強みだったのでしょうか

先ほども申し上げたように、当社はこの地に創業して長い歴史があります。また、スタッフはみな販売員として10年以上のキャリアがあります。お客様はもちろんお洋服を買いに来てくださるのですが、ゆっくりソファーに座ってお話をしたり、お茶を飲んだりすることを楽しみに来てくださる方も多くいらっしゃいます。店内にはいくつかソファースペースがありますが、席がいっぱいになってしまうこともあるくらい。そういったコミュニケーションの中で、低価格帯のお店とは違う、その人に似合うものを提案できるのが専門店の強みだと思います。「おすすめしてもらわなかったら買わなかったけど、買ってよかった」と言われるのが販売員冥利なんですよね。一緒にその人の魅力を発見していくことができることがうれしいです。

 

それから、これは地方ならではの強みだと思うのですが、地域に似たようなお店がなくて競合しない分、さまざまなブランドを取り扱うことができるんです。一つのお店でいろんなブランドを見て合わせることができる。これは都会のデパートなんかではできないですよね。都会に行かなくてもステキなお洋服を手に入れることができる、というのも、長年この地でやってきた強みかなと感じています。申請して、ちょっと自信を取り戻せたかな(笑)。

ステキなことを伝えるためには自分たちの感度とわくわくが大切

ーーこれからさらにやってみたいことはありますか?

お洋服が好きな人って、生活にもこだわりがある方が多いと感じます。今回は美容商品でしたが、お洋服だけでないライフスタイルの提案ができたらいいなと思っています。広い店舗を活かして、ヨガやフラワーアレンジメントの教室をしたり、キッチンスペースがあったらステキだな、と考えたりもします。今の時代は、物を買って楽しむのではなく、生活そのもの、自分や家族との時間をどう楽しむのかという考えに変化しているように感じます。そういった意識の変化に合わせた提案をしていきたいですね。それから、これからは自分たちがわくわくする気持ちを大切にしたいと思っています。


ーーわくわくですか?

もちろんお洋服は長年の経験もありますから、その経験則や流行をみることで、これは売れる、というものもあります。でも自分たちが本当に「すてき!」と思うものが並んでいると、値段に関係なくお客様にも伝わるように感じています。今までは自分たちは二の次にして、お客さま第一にしていた部分があるように思うのですが、お洋服だけでなく、それも含めたライフスタイルを提案していくのであれば、なおさら自分たちが楽しんでいる雰囲気があって、楽しく仕事をしていることが伝わることが大切ですよね。そのためにも自分たちの感度を磨いて、自分たちがわくわくするものを取り入れて、それをお客様に伝えていきたいと思っています。

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YAMAROKU(ヤマロク)
1901年創業の婦人服店。この地ではほかに出会うことのできない、こだわりのブランドがセレクトされている。

住所:〒396-0026伊那市西町5139-8
TEL:0265-78-6600
HP:https://yamaroku-web.com/
営業時間:10:00~18:30 
水曜日定休

担当支援員よりひとこと
今回の持続化補助金の活用にあたり、初めて事業計画作成に取り組まれ、また採択後の報告書類作成等慣れない事務処理に苦労されたとのことです。まだまだやりたいことがあるとがあるという事ですので、今回の経験が今後の取り組みに大いに活かされることと思います。
100年以上続く老舗企業で当時から女性向け商品を販売されていますが、取り扱い商品や販売方法もその時代に合わせて展開されています。新規のお客様も増えたということで、令和の新しい時代に活躍する女性に親しまれるお店づくりに今後もお役に立てればと思います。